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老いるにも意味が・・・

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

日本には2015年現在、100歳以上の人が5万人も生存しているとの事です。その中の1人で前衛抽象書家の篠田桃紅氏が、そのものズバリの「103歳になってわかったこと」という本を出版なさいました。現在も日々制作を続けていらっしゃる現役のアーティストだけに、いくつになっても完成は無いとばかり、本には老いてこそ解る人間とはどういう者かという深い思考と、生き方の極意が書かれています。

また先頃、百寿の新作個展「郷倉和子 百寿の梅展」が2ヶ月に亘り神戸の香雪美術館で開催されました。関連記事が載っていた新聞で目にした彼女の言葉が、次のようなものでした。"高齢者に残された仕事とは、営みの積み重ねしかなくなる傾向にあるようです。確かに精神面や体力面での衰えはありますが、いろいろ出来なくなった事を嘆くのではなく、今の自分に何が出来るかという、自己の総点検から導き出された本能によって描き出される永遠の今。これが描ききるということなのかもしれません。"

この郷倉和子氏と同じ女流日本画家には長寿を全うされた方が多く、小倉遊亀、片岡珠子両氏が102歳迄現役でいらしたのに続き、今年97歳の堀文子氏は70歳を過ぎてからイタリアにアトリエを構え、77歳でアマゾン川へ、以降、マヤ遺跡、インカ遺跡へスケッチ旅行をし、自由に作風を変化させながら現在も大活躍です。その著書「ひとりで生きる」には「私のモットー『群れない、慣れない、頼らない』」と書かれています。

老いるのは自然の摂理で、生きていれば誰もがたどる道ですが、人間は孤独が当たり前と納得出来るか否かで、人生の幸福度が違ってくるように思います。なぜなら孤独の中でこそ神と向きあえ、老いは恵みと気付かされる瞬間があるからです。

(日本画家 郷倉和子さんは2016年4月12日101歳で逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。)