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老いるにも意味が・・・

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

季節が春から夏へひらかれ、秋へと熟し、やがて冬となって、静かに澄み渡っていくように、人も生まれ、成長し、老いていく。

>老いとは人生の季節の一つであり、老いるとは生きることなのだと、誰かが教えてくれているかのようだ。「老いる意味は何か」という問いは、「生きる意味は何か」という永遠の問いの一節なのだろう。

ところが人間は、そのように自然の一部でありながら、本能を越えて、常に何かを与え合う不思議な生き物でもある。

この「与え合う」という習性は、人が生きる上で、また人の社会が機能する上で、不可欠なものらしい。人は何も持たず、無力な状態で生まれて来る。世話をされ、教えられ、愛情を注がれて成長する赤ちゃんは幸福だ。そして、子どもも多くを与えられるほど、生きがいや喜びを豊かに周囲の人々にもたらしてくれる。成人になれば、自分の技能や時間を使って、社会に貢献するが、自分の仕事が認められ、感謝されることもまた喜びだ。誰かを助け、役に立てることほど大きな幸福はない。

人が何かに生きがいを感じ、幸福に思うなら、そこに人の生きる意味が隠されているのではないだろうか。人は愛され、助けられて幸福になり、また助けることで幸福になるようだ。長い人生を経てきた人は、多くを与え続け、多くを与えられて来て、人の世の幸福をよく知った人なのではないかと思われる。

「静かに心を澄ませなさい。身体が老いたために出来なくなった事柄を悲しむ必要はない。それらは、あなたには不要になっただけなのだから。心を澄ませて、本当の幸福を思い出しなさい。あなたが望む限り、幸福は続く」そんな声がよく聞こえるように、冬は静かに澄み渡るのかもしれない。