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2人3脚

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

もう30年前になるのでしょうか、私がある修道会の神学生だった頃、若者向きに修道会の情報ミニコミ紙を造ってくれないかと上司に頼まれました。創立者の温かい心が伝わるようにと手書きの新聞でした。そのために、新聞社の一般向けの編集の講座に出て学び、意気込んでこの企画を始めました。

ところが、1年程経った時、発行が、いつも遅れがちになりました。読者から、まだかまだかとつつかれ、期待されているのだと、何とか発行し続けたのです。

その様子を見た上司が、1人の大学生を編集員として紹介してくれました。「しめた、これで作業分担すれば、仕事量は半分で済む」と、私はすぐさま飛びつきました。

しかし、実際はそうはいきません。それまでは自分勝手に、その号の話題を見つけ、適当にその話題を紙面に貼り付け、記事が出来たところから手書きで新聞を造っていたのですが、2人になると、大学生の彼曰く、「松浦さん、編集会議はいつしますか?次の号のテーマはどうしますか?どんな記事を集めますか?」と、逆に作業の時間がとられ、私はますます忙しくなったのです。

「しまった、2人でやるのではなかった。1人の方が気楽だし、ゆっくり出来るのに」と、元に戻そうと考えたその時、読者の人から「この頃、新聞読みやすくなりました。良い企画が続きますね」との反応が返ってきたのです。私はびっくりしましたが、よく考えてみると、複数の感性で作り上げる方が、独りよがりのものよりも格段に良いはずですし、お互いの欠点をカバーできる利点もあることに気づきました。

人と共に作り上げる豊かさは、煩雑で面倒だといった目の前の苦労があっても、余りある、そう感じた時でもありました。