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子供に手本を

高見 三明 大司教

今日の心の糧イメージ

人のいのちは、母親の胎内でおよそ九ヶ月間育てられます。その間子供は、母親の心臓の鼓動を聞いたり、母親の喜びや怒りや緊張などをじかに感じとったりします。そして生まれると、親のかかわり方でその人格が決まると言われます。たとえば、ゼロ歳児の赤ん坊は、言葉はわからないけれども、自分の感情や思いを顔の表情とともに声に出します。その声に応えて、母親が、同じような声、あるいは言葉を返すことが大切だと言われます。

このようにして、親子のきずながつくられ、子供の情緒も心も安定するからです。ですから、親のかかわり方そのものが、子供に対するもっとも重要な手本になると言えそうです。

人は成長するに従って、さまざまな人から、良かれ悪しかれ影響を受けます。良い手本は、いつもほかの人たちのことを思いやる言葉や行いではないでしょうか。

ある新聞社主催の作文コンクールで金賞をとった小学校六年生の女の子は、「声をかけることの大切さ」を訴えていました。彼女の両親は共働きですが、朝学校に行こうとするとき、近所のおじいさんが、背中のバックを見て、「今日は遠足かい?」と声をかける。さらに道路を渡ろうとすると、顔見知りのおばさんが「気をつけてね」と言ってくれる。学校から帰ると、隣のおばさんが、「これ食べない?」と言って手作りのお菓子を持ってくる。この女の子は、このような大人の「声かけ」をとてもありがたいと思い、自分もほかの人に積極的に声をかけるようにしたい、それが明るく、元気で平和な社会をつくることにつながると信じています。

ある人に声をかけるということは、その人のことを思っているということですし、このような人と人とのきずなをつくる努力こそ大切な手本だと言えます。