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子供に手本を

福田 勤 神父

今日の心の糧イメージ

最近の日本では、甘やかされて我慢することを教えられずに育った子供が、大人になって、思い通りにならない現実を直視出来ず、暴力を振るってしまう、というケースが、目につくようになりました。理由はどうあれ、暴力に訴えなければ自分を表現できないと言うことは、本当に悲しいことです。

「今日は、とても美味しいお料理を、ご馳走さまで御座いました」「いえいえ、何もお構いできず、失礼致しました」。

まだ5歳ぐらいの子供達のママゴト遊びでの言葉で、しかもそれぞれの母親そっくりな話し方に、吃驚してしまうことが何度かあります。子供は本当に良く、ご両親なり、ご家族の方々の日常の振る舞いを見ているのですね。

勿論、教育施設や一般社会の雰囲気も、子供の成長に大きな影響があることは確かです。

しかし特に大切なのは、何でも大人の真似をして成長する幼児期の教育ではないかと思います。

「お父さんに謝らなければ、決してお家へ入ってはいけません」優しく物静かな母から、生まれて初めて、そして、覚えている限りではたった一度、母から厳しく叱られたことがありました。父からも叱られた記憶がない私が、その厳しい母の姿に接して、子供心に思ったのは、「人は、してはいけないことと良いことがあり、してはいけないことは、決して、してはいけないんだ」ということでした。そして、あの温厚な父が、実は私と私達家族を、何時も見守ってくれている、ということを実感した瞬間でもありました。

私が10歳の時に亡くなった父母のその姿は、「3つ子の魂、100までも」と言うわけで、今も私の心に、しっかりと刻みこまれています。