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人生の教訓

小林 陽子

今日の心の糧イメージ

「将来の目標ややりたいことがみつからないと悩んでいる若い人達に言いたいの。大丈夫よ、みんなそれぞれの人生にちゃんと用意されているのだから。わたしがいい見本よ」と、Yさんはこともなげに言ってのけます。

太平洋戦争の記憶を留める最後の世代。

世界的に名を馳せたファッション界の寵児、パリ在住のデザイナーのもとで研鑽したYさんは、気がつくと、ニューヨーク、ロンドンと各都市を飛び回っていたそうです。

「そんな仕事をするなんて夢にも思わなかった・・・パリに最初に行ったのも目的なくフラッと・・」

もともと服を縫ったり、ものを作るのが十代の頃から好きだっただけ。

パリで泊まったホテルのおばあさんから、「こんな仕事してみない?」と声をかけられて「ハイ」と返事し、そのままパリに居ついてしまった・・・頭角をあらわそうと努力した訳でもなく、その場その時の流れに従ってマイペースで働いていたら、業界トップの「ファッションアドバイザー」という肩書きがついていた・・・。

Yさんとお喋りしていると、そうか、ゆったりあせらないで生きていけばいいんだね、神様はぜーんぶ用意してくださるのね、と大きな気持ちになるのが不思議です。

因みにYさんは曾祖父様の代からのカトリックの家系。

関東大震災のときには、教会がすっかり倒壊してしまったので、一時期、Yさんの家が教会として使われていました。

「すごい。イエス様とひとつ屋根の下で暮らせたのね」と感嘆すると、「わたしの生まれる前のことだから知らない」と、さらりとかわすYさんでした。