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いつくしみの特別聖年

シスター 山本 久美子

今日の心の糧イメージ

教皇フランシスコは、特別聖年公布の大勅書の中で「教会は、一刻を争うほど緊急に神のいつくしみを告げる必要性がある」と書いておられます。私は、「一刻も争うほど」という言葉に驚き、どういうことかと思いました。それほど今の世界が神のいつくしみからかけ離れていると言うことなのでしょうか。

この「緊急」という言葉から、私は自分自身の視野の狭さを改めて痛感し、もっと世界の現実に目を向け、人々の苦しみと必要性を知るようにという神様からの促しを感じました。

そして、今、私は社会を賑わしているニュースに向き合い、頭で理解はしているものの、どこか「対岸の火事」とみなしていた一つひとつの出来事を捉え直すよい機会となっています。

特に、私が大きな課題と感じることは、「貧困」ということと、「人的な環境破壊」という負の連鎖です。

例えば、全世界で五人に一人の人が極度の貧困状態にあると聞いても、飽食の日々を送る人々には、正直言ってピンと来ないというのが現状ではないでしょうか。しかも、多くの人々は、そういう貧富の差に知らぬ間に加担してしまっているという事実にも気づかないでいます。その現実も「貧困」のもう一つの側面だと、私は感じます。

また、「環境破壊」ということが問題視されていますが、それは自然破壊だけではありません。先進国では、自分の生活をより便利に、より快適にと道徳や倫理まで荒廃させ、人と人との「関係性」も薄れつつあります。

教皇様は神のいつくしみの光によって、人間の品位と尊厳、そして人と人との相互関係が大切にされる社会のあり方、人間としての生活のあり方を一人ひとりが問い直すように「緊急に」呼びかけておられるのだと感じます。