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なつかしい

シスター 山本 久美子

今日の心の糧イメージ

海外で過ごした2年間を思い出しますと、子どもの頃の思い出と同じような「なつかしさ」を感じます。

大きな期待と不安を胸に抱き、ドキドキしながら修道会の本部があるアメリカに向かいました。英語もろくに話せず、1人で飛行機に乗るのも初めてで、乗り換えの空港では一生懸命中学時代に学んだ英会話文を頭の中で考えながらやきもきした1人旅でした。

それから始まった生活は、毎日が驚きと喜び、そして不安と緊張の連続で新鮮そのものでした。

日本では普通で当たり前のような一つひとつのことが大きなチャレンジとなり、スリルに満ちていました。買い物一つでも達成できると大きな喜びになり、時には感動さえ味わえました。周りの環境や人間関係、言葉や文化、生活習慣、何もかもが日本の日常とは違う、そういう空間に自分を置くということには、大人を一瞬のうちに子ども時代に引き戻し、不安や警戒心さえゆるめて、探検心や冒険心を感じさせる魔法のような働きがあるものだとなつかしく感じられます。

養成コースでの多くの人々との出会い、世界中のいろいろな国の人々との交流、共に生活し学んだ体験は、それまでの私の狭い視野を広げてくれました。特に、キリスト教という同じ価値観、同じ神様を父と仰ぐ兄弟姉妹の仲間たちとの関わりは主イエスがお互いの違いを超えて「ひとつになるように」と祈られる、いのちの交わりを思い起こさせてくれるものでした。(参 ヨハネ17・21)

言葉が不自由で苦労も多々ありましたが、大切なのは、伝えよう、理解しようとする心、そして、自分らしく「私」自身を分かち合うことだと実感しました。

精一杯の毎日でしたが、はかりしれない恵みとなつかしさで一杯の思い出です。