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クリスマスとは

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

1843年に刊行されたチャールズ・ディケンズの小説「クリスマスキャロル」には、産業革命後のイギリス社会のクリスマスが描かれる。クリスマスが王侯貴族のものだった時代が終わり、多くの家庭で祝われるようになった頃のことである。

「クリスマスは親切と、許しと、恵みと、喜びのときなんです。長い1年のなかでもこのときだけは、男も女もみんないっしょになって、ふだんは閉ざされた心を大きく開き、自分たちより貧しい暮らしをしている人たちも、墓というおなじ目的地にむかって旅をする仲間同士なのであって、どこかべつの場所へむかうべつの生きものじゃないんだってことを思い出すんです。」。

金儲け主義者で無慈悲な伯父スクルージに、甥のフレッドが訴える。クリスマスの精神は思いやりと助け合いにあるのだと言う彼は、篤志家でも教師でもない、ただの普通の人である。

この普通の人が、まるで天から贈られたように、善きものを心の中に持っており、それを信じている姿には、読んでいて感動させられる。

クリスマスとは、人が自分の内に善きものを見つける季節ではないだろうか。私たちは皆普通の人である。他人への親切も、いつも出来るとは限らない、その程度の生き物だ。だが不思議なことに、クリスマスには、贈り物を準備したり、募金や奉仕をしてみたり、気がつけば、人のために心を尽くしている。そしてそれが苦労や犠牲であるほど、妙に嬉しかったりする。そんな時、私たちは自分の中の善きものに触れているのだ。

この季節、私たちは一人一人が神から愛されているのだということ、幼子イエスという最大の贈り物を受け取っているのだということを思い出す。そして自分たちの内にいる善きものをそっと揺さぶり目覚めさせてみるのである。