ストレス解消法

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

人間関係が思った通りにならない。仕事が思った通りに進まない。思った通りの人生を生きられない。そんなとき、わたしたちはいらだち、心にストレスをためてゆく。ストレスの原因は、どうやら相手が、あるいは自分自身が、自分の思った通りにならないことへのいら立ちにあるようだ。

なぜ、わたしたちは思った通りにならないといら立つのだろうか。それは、相手に、あるいは自分自身に、過剰な期待を抱いているからだと思う。たとえば親子の関係。「わたしの子どもなのだから、理想的なよい子に育ってほしい」という期待が裏切られるとき、わたしたちはいら立ち、子どもに腹を立てる。だが、自分の子どもだからといって、自分の思った通りに育つはずだと言えるだろうか。子どもには子どもの人生があり、それは子ども自身が選んでゆくもの。親が、子どもの人生を決めることはできない。そのことを思い出し、子どもの生き方を尊重できれば、子どもの振る舞いを見ていら立つことはないだろう。

子育て中に、自分自身に腹が立つこともある。「わたしはもっと理想的なよい父親、よい母親になれるはず」という自分への期待が裏切られるとき、わたしたちは自分自身に腹を立てるのだ。だが、わたしたちはそんなに立派な親になれるはずの人間なのだろうか。背伸びするのをやめ、自分の限界を受け入れられれば、自分へのいら立ちは消えてゆくに違いない。

ストレスをなくす一番確実な方法は、すべてを自分の思った通りにしたいと願う傲慢な心を捨て、謙遜な心であるがままの相手、あるがままの自分自身を受け入れることだ。心にストレスがたまったときには、「わたしは相手に、あるいは自分自身に、過剰な期待をしていないだろうか」と自分に問いかけてみたい。

ストレス解消法

岡野 絵里子

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現代社会において、人が感じるストレスは数多くあり、様々に心身を苦しめるが、解消法もまた人間の数だけあるのではないかと思う。私の好きなストレス解消法は、冗談を言って笑うことだ。子どもの頃から、ウイットのある大人たちが周囲にいて、その笑いの中で育ったせいかもしれない。

昔のことだが、或る日、両親が揃って出かけることになった。だが父の支度が遅く、洗面所からなかなか出て来ない。母はイライラと怒り始めた。その日は、母方の祖母が訪ねて来ていて、洗面所へ父の様子を見に行ってくれた。「まだもう少し時間がかかるかもしれないわね」「まあ、一体何をやっているの?」母はまた腹を立てたが、祖母は面白がっているようだった。「鏡の前でね、一生懸命髪の毛を・・・並べているわ」父は髪が薄かったのである。母は思わず、ぷっと吹き出して笑った。緊張していた部屋の空気が和らいで、明るくなり、母はもう怒らなくなった。笑ったせいで、心がほぐれ、父が少なくなった髪を整えるのに苦労していること、労ってあげなければいけないことを思い出したのである。2人は仲良く出かけて行った。

人は不幸な時ほど、笑いを必要とする。笑いは、不幸に閉じ込められた状況をすぐ幸福に作り変えはしないが、少なくとも、幸福の方角に大きく窓を開ける。良き笑いは、人間の愚かさや至らなさを露わにしながら、誰も傷つけない。自分たちのありのままを受け入れて、何とかやっていく勇気を与えてくれるものである。笑うことで、人は日々の厄介なストレスをいなしていけるのではないだろうか。私自身もストレスが溜まって疲れた時など、ユーモアのこもった祖母の一言が、生きる楽しさの方向へ大きく窓を開けてくれたことを思い出す。


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