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天の国の鑑

植村 高雄

今日の心の糧イメージ

「天の国」とは、どんなところだろう、と空想することがあります。私が信じている神様のイメージは、宇宙の創造主で全知全能、愛情のかたまりのような方、しかも三位一体という不思議な存在の神様です。そんな神様がおさめておられるのが天の国だと考えています。

さて「天の国」という言葉に触れると私は必ずAさんの事を想い出します。私は40代の頃、大学病院の精神病棟で心理療法の仕事を手伝っていました。そこで、長年入院されていたAさんと出会います。あまりにも純粋で人を想う、優しく暖かく美しい心のAさんを知りますと、これが地上の天国かも、と感じる事がしばしばありました。入院されていたAさんは生まれた後、色々の出来ごとがありその苦しみから心を病んだ方でした。遺伝的に大きな障害を持っていて、生活は苦しい日々のようでした。周囲から侮蔑され、言葉の暴力は日常茶飯事、丁度、キリスト様が十字架にはりつけにされていくような場面を沢山、体験されていました。

私にだけは、その折々の物語を静かに話して下さるのです。他の人々には厳しい言葉を投げつけて暴れるのですが、何故か、私には静かに、その苦しみと喜びを語り続けてくださいました。Aさんが屈辱を乗り越えて生きた人生は、私にとって、天の国への道筋を教えてくださる鑑でした。

宇宙の創造主の父、その息子のキリスト、そして父と子から迸る愛の聖霊、Aさんとの触れ合いは神様との触れ合いのようでした。

 

Aさんの心の世界は、この地球の悲惨さと天の国の暖かい愛の世界を同時に垣間見させてくれました。Aさんは天の国で今は明るく元気に爽やかに生きておられることでしょう。