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無限の可能性

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

学生の頃、年長の方々から「若さとは素晴らしいものだ。若者は無限の可能性を持っているのだから」と、しばしば言われた記憶がある。その度に、就職もままならない自分たち若者には無限の可能性などなく、ただ未来が未決定であるにすぎないのだ、と胸の内で思っていた。

そもそも「無限」や「永遠」は人間の持ち物ではないのである。地上における寿命さえも儚い人間のポケットには、残念ながら、無限の可能性など収めきれるものではない。

だがその代わりに、この儚い生き物は素晴らしい力を持っている。それは「人間の可能性」である。地上において有限である者の持つプライドであり、結束であり、希望である。人間は大勢で力を合わせることも、また個体が滅んだ後、次世代に仕事を引き継いでいくことも出来る。実に壮大な「有限の可能性」を持っているのだ。

それに気づくと、人間一人一人には限られた能力しかないことにも、深い意味が隠されていると思えてくる。人は一人では生きられず、他者の助けを必要とするように造られている。またそれぞれが異なる個性を備えているのも、助け合いが喜びであるように、という意味があるのだと思いたい。高い能力を持った同じ個体が揃っているより、あらゆる能力を持った様々な個体が助けあっている方が人類は生き残っていけるのだと思われる。

そして、人間は欠けたところを埋めるかのように、憧れやまぬ心を持っている。技術の加速度的な進歩や優れた研究、思想、芸術などは、人間の限界を広げ、その外にある永遠に触ろうとしているかのようだ。

永遠を乗せた掌。それは彼方にあって、同時に私たちを暖かく包んでもいる。ただ私たちの有限な視力では見えないだけなのである。