一方「自分を捨てる」という意味を持つ言葉として、まず思い出されるのは「献身」という単語でしょう。自分自身の利益は全て犠牲にして他者のためにつくすことで、反射的にコルベ神父様やマザーテレサの生涯を思いうかべます。
では「古い自分を捨てる」となると、どういうことなのでしょうか。動物には成長の段階で殻を破って大きくなっていく種類のものがあり、夏の朝、草木の葉裏でせみのぬけがらを発見したり、田舎の道でカラカラに日干しになった蛇のぬけがらを見てびっくりしたりという経験は、子供の頃の思い出でもあります。
それならば人間にとってのぬけがら、古い自分を捨ててこそ、人間も成長してゆけるのでしょう。そうすると古い自分の「古い」という言葉が重要です。古いとは時間をイメージさせ、昔とかずっと長い期間を指す言葉ですから、人間は絶えず自分自身を進化させて、若い俳優のように何処迄自分が変われるか、芸人が献身的に笑いに奉仕するように、古い自分にならない努力が大切という事になるでしょう。