▲をクリックすると音声で聞こえます。

まわり道をしても・・・

堀 妙子

今日の心の糧イメージ

かつて、エリザベス・サンダース・ホームの創立者沢田美喜さんとの出会いがあった。

当時、私は米沢に住んでいた。毎年12月には、キリスト教のさまざまな宗派が合同で市民クリスマスを行なっていた。講師は沢田美喜さんだった。大雪で特急列車が全面運休となった。文化会館の客席は満員だった。ステージに司会の方が出てきて、「沢田美喜女史は、列車が運休となり、今、大磯から米沢にタクシーで向かっています。もうすぐ米沢に到着します」と告げた。ちょうど1時間後沢田美喜さんは壇上に登場した。

「タクシーの運転手さんにお願いして、雪のために列車が止まって米沢に行けないから、雪のない道路を探して、まわり道をしても米沢に行ってほしいと頼んだ」と講演の初めに話された。

おそらく主催者からの御礼や交通費よりもずっとタクシー代のほうが多かったと思う。10数万のタクシー代をご自分で支払われた。講演の内容は沢田美喜さんがエリザベス・サンダース・ホームを創設し、その後の困難な出来事等を話された。

講演が終わると、「明日も教会で講演があります」というアナウンスがあった。次の日も大雪だった。私は昨晩の沢田美喜さんのお話に感動し、雪道を歩いて教会へ行った。招いた教会の方以外、聴衆は私一人だった。沢田美喜さんはただ一人のために講演をされた。講演が終わると沢田美喜さんが壇上から降りていらっしゃり私のそばに来られた。

「うちへいらっしゃいません?」と一言。私は「はい」。

すぐに大磯にいき、エリザベス・サンダース・ホーム内にある小学校で働き始めた。

体が丈夫でなかった私は1年間働いて病気になってやめたが、沢田美喜さんとの出会いから、「まわり道をしても」という言葉は、キリスト信者の宣教魂だと思っている。