私が10歳の夏、経済的に豊かでないある家庭にお中元を届けに行くことになりました。そのとき、父が私を諭した言葉が、今も耳に残っています。「礼儀正しく、丁寧な言葉で話しなさい。」私はこれを聞いて、誰に対しても敬いを忘れてはならない、との教えを汲み取ることができたのでした。こうした折々に聞く諭しや、ふと目にしたある人の第三者に対する優しい態度など、目と耳を、そして心を開いて学びとった数々が、私の人生をどれほど豊かにしたことでしょう。
あるとき、日常生活のあらゆることに巧みなシスターに感心して、どこでそのような知識を得たのか、を尋ねたことがあります。すると、すぐに答えが返ってきました。「それはね、たとえば大工さんが何かをなおしていれば、それをじっと見て覚えたのよ。」これを聞いて、このシスターの探究心、あらゆることに関心を抱く学びの努力に心を打たれました。このような人生はまさに、自分が置かれている環境には左右されず、つねに喜びを見出す終わりのない「学び」の連続ではないでしょうか。