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人生は学び

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

私は、長い間、ある大学で「人間学」という科目を担当してきました。人間学というのは、理窟っぽい言葉でいえば、人間とは何か、何のために生きるのか、どう生きるべきなのかという根本的な問題を哲学的に論じながらも、人生や社会のさまざまな問題を具体的な例をあげて学生たちと一緒に考える学問といってもよいでしょう。

その時、学生たちからも面白い意見や言葉が出るので、大変有意義な授業といえるかもしれません。そこで感じたことは、人生のどんな事柄もみな、人間というものが、本来すべてを知り、全てを持ち、すべてを愛する素晴らしい存在だということです。しかし、現実の生活に追われ、この大切な真実を思い出すことはほとんどありません。ですから、人生が学びというとき、知識や経験を通して人は、本来の素晴らしさに気づくことなのです。

こんな寓話があります。

ある田舎町に一人の貧しい男が住んでいました。そこに一人の旅人が立ち寄り、一夜の宿を求めました。男はぶつぶつ不平を言いながらも、彼を泊めることにしました。翌朝、旅人は出立する前に、男に対し「あなたは貧乏で、みじめで、不幸であるということを、昨晩私に話されました。しかし、あなたはこの屋敷の土地の中に莫大な財宝が隠されていることに気づいていません。それを掘り起こして、その財宝をお使いになったら、あなたは非常に豊かな人になるでしょう。私の言うことを信じて、耕してみなさい。」と言って立ち去って行かれました。男がその言葉を信じて掘ってみたところ、信じられないくらいの財宝を発見しました。

この寓話が教えていることは、人間の魂という内部には、無限の宝が潜んでいるということです。