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クリスマスのおとずれ

土屋 至

今日の心の糧イメージ

私の手許に、1から24までの番号がついた小さな赤い引き出しでできた緑の木の箱がある。昨年の11月に買ったものである。その引き出しの中には一つずつキャンディが入っていた。その箱にはサンタクロースやクリスマスツリーの絵が描いてあるので、これがクリスマスグッズであることは容易に想像がつくのだろうが、いったいこの引き出しは何のためにあるのか、日本人にはわかりにくいだろう。

クリスマス前の一か月間を教会では「アドベント」という。日本語ではイエス・キリストの誕生を待つときという意味で「待降節」とよばれている。

1から24までの番号のついた引き出しでできた箱というのは、12月に入ったらクリスマスまでの間、1日に1つずつキャンディを食べていいという意味のアドベント・ボックスである。子どもたちはそのキャンディを1日にひとつずつ食べながら、クリスマスを待った。もっと食べたくなるのをガマンしながら1日に1つという約束を守った。

教会では、指折り数えてクリスマスを待ち望む間、子どもたちは1日に何か善いことを1つするようにすすめられる。いつも食べるおやつの量を減らしてその分を貧しい子どもたちのために寄付するとか、電車の中でお年寄りの方に席を譲るように心がけるとか、家の掃除や食事の準備や片付けを手伝うとか、いろいろと考えながら、思い思いの善いことを1日1つずつ積み重ねながらクリスマスを待った。その1日1つの善いことやガマンのご褒美としてたったひとつのキャンディだったかもしれない。もしかするとこの間のおやつは1日にたったひとつのキャンディだったのかもしれない。

そうやって待ちに待ったクリスマスを迎えたときのよろこびはまた格別だったと思うのである。