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クリスマスのおとずれ

福田 勤 神父

今日の心の糧イメージ

最近、日本と北朝鮮そして中国との間で、島の領土の問題が持ちあがり、不穏な空気が流れているようです。「人類の歴史は戦争の歴史」という現実・・・。

南フランスのバスクに生まれ、後に宣教師として来日し、数々の日本語の著作活動 で著名な故カンドウ神父が、第一次世界大戦の最中、塹壕の中でクリスマスを迎えた時のエピソードを書いています。

イギリス軍もドイツ軍も、岩だらけのフランスの平野に何キロも続く溝を掘っ て、この溝から機関銃や迫撃砲を打ち合いました。そしてクリスマスの夜、兵士達が寒さに震えながら祖国の家族のことを思っていたその時、一人のイギリス兵が、ドイツ軍の塹壕から、「清しこの夜」の歌声が聞こえるのに気がつきます。「シュテイー レ ナハト・・・」。イギリス兵も、「サイレント ナイト・・」と口ずさみ始め、気がつくと両軍の兵士たちの大合唱になりまし た。そして、それぞれの言葉で書かれた「メリークリスマス」のサインが、塹壕の両側に高々と掲げられ、大勢のイギリス兵とドイツ兵が姿を現し、クリスマスの朝の光の中で顔を合わせたのです。

しかし、クリスマスの休戦もここまででした。事態を憂慮した高官達が、ただちに兵士達を塹壕に呼び戻し、そして発砲が再開されました。わずかですが、生き延びた者の心には、前線で迎えた、あのクリスマスの忘れられない記憶が残りました。

あの日、彼らの心には、きっと「敵を愛しなさい」という聖書の言葉(参・マタイ5・44)が浮かび、その胸に刻みつけられたに違いありません。私は何時も、クリスマスの喜びと同時に、『戦争のない人類の歴史は何時現実に』、という思いが心に浮かんでくるのです。