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先輩に倣う

阿南 孝也

今日の心の糧イメージ

定年後も、7年にわたり講師として授業を担当してくださった先生が、この春退職されました。大勢の教職員が見守る中、最後の授業が行われ、生徒から贈られた花束を手に、大きな拍手に包まれて教室を後にされました。

熱意に満ちた授業や、真摯に生徒と接するお姿から、多くのことを教わりました。「うん、そうだね」とうなずきながら、子どもたちの話に熱心に耳を傾けておられた笑顔が目に浮かびます。思春期を迎えた子どもたちにとって、「それでいいのだよ、やってごらん」と肯定され、受け入れられることは、どれほど大きな力となり、励ましとなったことでしょう。チャレンジすることによって、成功体験から得た自信は、生涯のかけがえのない財産となったことでしょう。たとえ失敗したとしても、失敗しなければ気づかない学びがたくさんあったはずです。

勉学にもクラブ活動にも学校行事にも積極的に取り組み、生徒が活躍できる場を豊富に備えた私たちの学校の校風は、創立以来、大勢の先生方と、そこで学んだ子どもたちとの、真剣な心のふれあいによって築かれた、貴重な実践の実りであると感謝しています。

子どもたちは、一人ひとり異なる賜物を神からいただいています。それらを見つけて研き伸ばすことは、学校の大きな使命であると思っています。型にはめようとすると、生徒の自由に伸びようとする芽を摘んでしまう恐れがあります。デパートの化粧箱ではなく、風呂敷のように、子どもたちの、デコボコでごつごつした個性を、そのまま包み込むような、温かさや優しさを持った学校であり続けたいと願います。

自由な校風を守り育てながら、子どもたちの成長に関わることのできる幸せをかみしめて、日々の務めを果たしていきたいと思っています。