この言葉が、折あるごとによみがえり、私に事がらの大きさを考え、つまらないことに自分の時間とエネルギーを費やしてはもったいないと思う習慣をつけてくれました。平常心に立ち戻ることを可能にする一つの秘訣です。
母は結婚のため、愛知県の小さな町から東京へ出て来ての生活の中で、父の地位にふさわしい教養を身につけるまでには、辛いことも多かったようです。その母が、自分の経験から子どもたちに伝えた言葉には、説得力がありました。「人は皆、自分が一番かわいいのだから、甘えてはいけない」 期待しすぎるから、期待はずれの時に腹が立ち、平常心を失うのです。
期待してはいけないというのではありません。ただ、自分も他人も、弱い人間であることを心に留めて、「許す心」を忘れないでいるようにという戒めでした。
醒めた目で問題の大きさを見極め、温かい心で人間の弱さを包むこと。このような「目と心」のバランスが、平常心に立ち帰り、それを保ちながら生きる私の毎日を、助けてくれています。