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一致を願う

シスター 菊地 多嘉子

今日の心の糧イメージ

新約聖書の「使徒言行録」二章に、初代教会のキリスト信徒の共同体について語る一文があります。「信者たちは皆一つになって、すべての物を共有にし、財産や持ち物を売り、おのおのの必要に応じてそれを分け合った。そして、毎日ひたすら心を一つにして神殿に参り、家毎に集まってパンを裂き、喜びと真心をもって一緒に食事をし、神を賛美していたので、民衆全体から好意を寄せられていた。」(44~47)

共同体がこれほどの一致に導かれた秘訣はどこにあるのでしょう。使徒パウロは教会に宛てた書簡の中で、信徒を「キリストに結ばれている者」と繰り返し表現しています。この恵みによって、「自分を過大に評価せず、神が各自に分け与えてくださった信仰の度合いに応じて慎み深く評価すべきである」(ローマ12・3)と勧めるのです。このように、共同体の各自が、一つの体を形作っていることに目覚めるなら、互いを体のかけがえのない一部分として敬い、各自が固有の賜物に応じて目標達成に貢献できるよう助け合うでしょう。

自己中心や自己主張の傾きが共同体の一致を妨げる誘因になることは周知の事実です。パウロは、主イエス・キリストの名によって次のように勧めています。「皆、勝手なことを言わず、仲たがいせず、心を一つにし思いを一つにして、固く結び合いなさい」と。(1コリント1・10)

私たちにとって容易ではないこの理想を実現するには、まず、神様の愛に自分をゆだね、信頼をこめて一致の恵みを願い求めること。そして、この謙虚さと同時に、できる限りの努力を惜しまないこと。

死を前にしたイエス様が御父に捧げられた祈りが胸に響きます。「父よ、すべての人をひとつにしてください。彼らも私たちの内にいるようにしてください。」(ヨハネ17・21)