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心輝かせて

土屋 至

今日の心の糧イメージ

 わたしは、子どもたちと科学の楽しさを体験する横浜のNPOの活動にボランティアとして参加しています。

 たとえば静電気で動くモーターの工作をするときのことを紹介しましょう。

 はじめに簡単な実験があります。紙でこすって静電気を帯びた2本のストローの1本を瓶にたてかけ、もう1本のストローに近づけるとストローは逃げるように回り出しますが、紙でこすったアクリル棒では逆にストローが吸い寄せられるように動きます。

 この現象をみて子どもたちは、はじめおどろきとともに不思議さを感じます。どうしてこうなるのか、あたまのうえに大きな「はてな」のマークが目に見えるようです。そしてこの現象がどうして起こるのかの説明を受けて納得したときに、子どもたちの心に小さな輝きが見られます。

 もっと輝くときは、工作をして静電気モーターを完成させ、塩ビパイプをこすったら、それが回り出したときです。子どもたちは跳びはねるように喜びます。

 しかし、それがうまく回らないときに、輝きは消えて一瞬にしてどん底に突き落とされたような悲しい表情をします。このときがアシスタントの出番です。

 私はこういう場合に子どもたちにいいます。「おじさんにとってはこういう場合が一番楽しいんだよね。どうしてうまく回らないのだろうか? こうしてみたらうまくいくかとか、あれこれ考えながらやってみて、その原因が突き止められて回り出したときがもっとも楽しいときなんだ。すんなりとうまくできちゃったときには、この楽しみが味わえないんだよね」と。

 子どもたちの心も、すぐにすんなりとうまく回り出したときよりも、はじめはうまくいかなかったものがあれこれしているうちに回り出したときの方がずっとずっと輝くのです。