1606年殺人を犯しローマから逃亡、ナポリ公国に匿われ、つかの間注文が殺到し制作の日々を過ごしますが、また不祥事を起こしマルタ島へ逃れました。マルタでは聖ヨハネ騎士団に入り、悔い改めの心で「聖ヨハネの斬首」の大作に取り組み、その出来映えに教皇様から罪を許された程です。
私は30年前ロンドンのナショナル・ギャラリーで「ヨハネの首を持つサロメ」を見た時から「聖ヨハネの斬首」を見たいと念願していました。昨秋私の作品をマルタで発表する事になり、展覧会の会期にあわせマルタ島を訪問し、滞在中にバレッタの聖ヨハネ司教座聖堂に行きました。壁一面に描かれた名画と対面し、鬼気迫る描写を見て確信しました。カラヴァッジョが心輝かせて集中できるのは絵画制作だけ、いきなりキャンバスに直描きし、自らも絵の中に入りこみ、作中人物と共に生き、心輝かせて描き切ったということを。