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心輝かせて

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

 心が輝くとは、どういう状態なのでしょうか。わたしの経験からいえば、たとえば昔の旧制中学時代のとき、クラスにはがき大将がいて、おとなしい僕たちをいじめていました。

 しかしあるとき、わたしは数学の試験で満点をとったので、教科の先生がわたしの名前を挙げて、「学年の中で数学の成績が満点だったのは、越前君だけであった」とクラスの皆の前で、褒めてくれました。内心は得意でしたが、それよりもがき大将たちが、学期末試験の前に、わたしのところに来て、喜六さん、数学の問題の解き方を教えてくれよと言ってきました。それで一生懸命教えてあげました。彼らはその結果かどうか分かりませんが、なんとかみな及第しました。それからは、わたしに意地悪をしなくなっただけでなく、クラスの他の連中にもいじめをしなくなりました。

 この出来事で、わたしが得意になったわけではありませんが、彼らが難しい数学の問題が解けて、自信を持ったことが嬉しかったのです。

 そのうちの一人は、卒業後、近所のひとたちにも、町のためにも随分良いことをした、と同級生から伺い、写真も見せてもらいました。亡くなる前に、一度彼に会いたかったと思います。数学を教えてあげたということをきっかけに、彼が成績を上げて卒業できたことや、社会に出ても、地域社会のために貢献したことなど彼をたたえたいと思います。

 ともあれ、人に良いことをしてあげたという行為は、心を輝かせてくれると思います。それから、学びというか、たとえば聖なる書物である聖書の一節でも読んで、その中身を味わうならば、心が清められ、照らされるでしょう。また、自己の向上を願って、一つのことでも根気強く続けていけば、内面が磨かれて、光輝くようになるでしょう。頑張ることです。