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心輝かせて

湯川 千恵子

今日の心の糧イメージ

 今年も大寒の時期「味噌の仕込み」をしました。もう30数年、私は大豆味噌を手作りし、賞味しています。

 末息子が1年間のアメリカ留学から帰った夜、我が家の味噌汁を食べて「うーん、うちに帰った気がする!!」と言ったので、私は嬉しく思いました。

 以前、テレビの仕事をしていた時、この「豆味噌の手作り」を取材して、そのプロセスが意外にシンプルで、おいしかったので、私も作ってみたくなり、近所の友人主婦たちと材料を共同購入して作り始めたのがきっかけです。当初は各自が大豆をことこと煮て、それを厚い靴下にビニール袋を重ねた足で踏みつぶし、塩と麹を混ぜ合わせ、タッパー容器に空気が入らないように投げ入れて密封。冷暗所に置きました。1年経つと黄色い大豆が黒くなり、3年経つと溜り醤油の上澄みが出て、一番の食べ頃になります。

 最近は、全材料を混ぜ合わせたものが売られていて、後は容器に移し替えるだけです。今年はそれを使ってみました。昔に比べたら嘘のように簡単ですが、大豆タンパクと塩・麹が時間と気温の変化によって分解され、豆味噌が醸成されてゆく過程は同じです。味の方はどうでしょうか?3年先が楽しみです。

 昔から「味噌・醤油」は日本の食文化の基本調味料です。その味噌を自分の手の内に持っているというのは、何ともいえない心豊かな喜びがあるのです。

 便利な電化製品がなかった昔の主婦たちは家事万端手作業で大変だったことでしょう。しかし「手前味噌」という言葉があるようにお隣とは異なる我が家の味噌を手作りし、家族の食卓を支え、愉しませているという自負と深い満足感があり、その顔は輝いていたのでは?と思われてなりません。