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子供に手本を

植村 高雄

今日の心の糧イメージ

 欧米社会で生活していると、特にイギリスでは、バスの中でもお行儀の悪い、知らない子供達に、親がそばにいるにも拘わらず厳しい説教をしている大人を見かけます。しかし、殆どトラブルにはなりません。その様子を感心して見ていました。

 さて、日本社会でも、子供に手本を示さないといけない、と平素考えているので、車が来ない道路でも、そばに子供が居れば、赤信号を無理に守っている自分が何となく可笑しく、照れながらも待っています。

 子供に手本を<これみよがし>にするのは大変見苦しいし、子供も大人の厭らしい一面を熟知しているので、この<子供に手本を>と言う考え方は大変難しいようです。

 今でも思い出すと感動する子供時代の想い出があります。当時、私は神奈川県の葉山小学校にいました。勉強が終わり、学校から帰る道すがら、時々アメリカの戦闘機が突然襲う事がありました。葉山には、トンネルがあり、アメリカの戦闘機が来襲すると子供達はそのトンネルに逃げ込みます。

 或る時、必死で逃げてくるのですが、間に合わない子供がいました。すると、機関銃の音と共に、自転車に乗って走ってきた大人が、その子供に覆いかぶさるように倒れた場面を見ました。後で先生に聞いて分かったのですが、その大人は海軍の水兵さんでした。残念ながら、その兵隊さんも小学生も死亡してしまったそうです。

 その現場を見た私は、生涯、この兵隊さんを忘れる事が出来ません。高校生の時、カトリックの洗礼を受けましたが、キリストの十字架の場面と、その兵隊さんの姿がいつも思い出され、宗教の勉強や哲学の勉強の時、必ずその兵隊さんの、見も知らない少年を庇い死んでいった優しい気持ちを思い、感動しています。