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愛の実践

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

 私にとって日々の大問題のひとつが、買い物です。商品を見ることができないため、店員さんによる誘導サービスを利用して買い物をします。これが、店員さんの対応次第で、楽しい会話の時間になることもあれば、健常者の何倍ものストレスと手間を要する作業になってしまうこともあるのです。

 毎日のように立ち寄る店では、店員さんが私の好きなものや希望をおぼえていて、「商品の名前と値段を読みながらレジを打つのでしたよね?」とか、「お客さまの好きそうな、フワフワのスイーツが入っていますよ」などと、心暖まる言葉で迎えてくださることもしばしばです。

 一方、経験不足や、想像力が足りないために、せっかくの誘導サービスを台無しにしてしまう方も少なくありません。

 「何かパンに合うお惣菜はありますか?」「お惣菜って何ですか?」

 「コロッケのようなものとか」「コロッケはありません」。「フライドチキンのようなものは?」「チキンはおいてありません」。

 「ではお惣菜コーナーには何がおいてありますか」「どんなものがほしいんですか」。

 こちらは買う気満々。惣菜コーナーには確実に美味しそうなものが並んでいるはず、なのに、こんな会話が延々と続き、買い物がまったく進まない。私がどんなに質問にヒントを交えても、店員さんの側に伝わらないのです。相手の立場になるとか、相手の状況を想像するといった愛の気持ちがなければ、こんな簡単な会話も成り立たないのです。

 

 かと思うと、私を友達のように思いやり、ご自分の視点で上手に品物を説明してくださる方もいます。彼らからは、暖かく、愛に満ちた語調が感じられます。

 こんな経験から、私はいつも、愛の実践は最も小さな言葉や行動から出発するのだと思うのです。