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愛の実践

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

 わたしが神さまを信仰したのは、10歳のときでした。雪深い東北のある小さな町で、教会もない所でした。そこにあるカトリックの専門学校に入学していた姉が、一時帰省してきました。姉は、炬燵に入りながら、神さまがいること、良い子になれば、天国に入れることなどを話してくれました。それを聴いて直ぐに信じたわたしは、姉から貰った『聖教の本』を夢中になって読みました。そして、決心しました。よし、良い子になって天国に入れてもらおうと。

 それからは、どうしたら良い子になれるかということが、終生の課題となりました。そこでまず実行したのは、一生懸命神に祈ることでした。次にできるだけ欠点を直し、長所を伸ばそうと努めました。これは成功しませんでしたが、大きく道を踏み外すことはありませんでした。

 それから神のこと、天国のことなど含め、宗教、特に魂に関する霊性の本を愛読しました。こうして18歳のとき、信州の教会で洗礼を受けました。

 そのときから、愛の実践つまり愛徳こそが、天国に入る唯一の道だと知りました。愛の具体的な実践方法は、十人十色、千差万別ですが、相手である他者のほんとうの利益になると確信することを、自分の分に応じて与えることではないでしょうか。私の場合は、神父であり、修道者であり、教師ですから、他者をあるがままに受容した上で、その人が精神的にも霊的にも成長するようなことを与えてきました。たとえば、真理を教え、愛と善に導き、助け、励まし、褒めることなどです。決して物質的な利益になるようなことは与えませんでした。そのようなことは神がそれぞれの時に応じて与えてくださると思っているからです。私は、それを各人が引き出せるよう助けているにすぎません。