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愛の実践

シスター 菊地 多嘉子

今日の心の糧イメージ

 「友のために命を捨てること、これ以上に大きな愛はない。」受難と十字架上の死を前にして、弟子たちに語られたキリストの言葉です。(ヨハネ15・13)

 自らの日常生活を省みながら、これが私にとって到底実行不可能な掟のように思われたとき、脳裏に浮かんだ出来事がありました。

 電車のホームから転落した見ず知らずの人を救うため、線路に飛び降りて自分の命を犠牲にした韓国の留学生のこと。ごく最近では、電車の線路にうずくまった老人を助け出して、命をおとした女性のこと。・・・危険にさらされた人を救うため、とっさに自分の命を捧げたお二人は、日頃から人との関わりの中で愛を実践しておられたに違いありません。

 使徒パウロが「愛の賛歌」の中で歌っている愛、「忍耐強く、情け深く、自分の利益を求めず、すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える」真実の愛を。(Ⅰコリント13・4〜7)

 この愛は努力によってかちとるのではないことを、キリストご自身が教えてくださいました。「父が私を愛されたように、私もあなたがたを愛してきた。私の愛にとどまりなさい」と。(ヨハネ15・9)「愛を知ったのは、イエスが私たちのために命を捨ててくださったことによる」と使徒ヨハネは書いています。(Ⅰヨハネ3・16)

 十字架をみつめてイエスの愛を知り、その愛に自分をゆだねてこそ、私たちはイエスの愛によって人を愛することができるようになるでしょう。そのためには自我から解放され、イエスに自分を譲り渡すことが求められます。これもまた、イエスご自身のわざであって、私はそれに、いわば協力することによって愛の実践に導かれることを心にとどめたいと思います。