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それでも感謝

阿南 孝也

今日の心の糧イメージ

 私の勤める学校では、毎年11月に、中学3年生は、長崎、阿蘇方面に研修旅行に出かけます。

 今回の阿蘇は天候に恵まれました。世界一のカルデラが一望できる大観峰からは、一面の雲海に浮かぶ阿蘇五岳を展望することができました。噴煙をあげる阿蘇北岳の登山を行い、噴火口の底まではっきりと見ることができました。草千里から眺める阿蘇の山々が青空に映えて、その壮大なスケーに圧倒されました。

 大自然が相手です。残念ながら、霧のため見通しの悪い年や、雨に見舞われる年もあります。天気が良くても、風向きによっては、有毒ガスの影響で火口に近づくことができません。

 前年は、小雨が降り続くあいにくの天気でした。天候の回復を祈りながら、バスで外輪山を登りましたが、霧に覆われていたためにUターンせざるを得ませんでした。阿蘇の山々は、霧の彼方に姿を隠したままでした。やむを得ず、山麓の草千里にある火山博物館を見学することになりました。

 帰路につく時間が迫ってきた頃になって、ようやく雨が上がりました。生徒たちは、バスガイドさんと記念写真を撮るなど、思い思いの時間を過ごし、いよいよ出発の時刻を迎えました。その時でした。霧の切れ目から、緑の草原がうっすらと目に飛び込んできたのです。一面真っ白だった空間から、草千里の雄大な姿が浮かび上がってきました。「うわぁー。すごーい。きれいー」の声が一斉に沸きあがりました。帰りのバスの中は「きれいだったね」「神秘的だよね」という、感動の言葉が飛び交いました。

 毎年天候は変わりますが、子どもたちにとって、神の創造された自然の雄大さ、厳しさ、温かさを心に刻む、かけがえのない機会となっていることは変わることがありません。