そんな中で数点の横向きに、注目してみましょう。
「テンピの聖母」は両手でイエスを抱き、イエスの足にはひとすじの血が流れていて、聖母の首から背にかけて、わが子を守る強い意志を感じます。「幕の聖母」は聖母子と共に十字架を手にした幼い聖ヨハネが描かれており、聖母の背後が特に暗く表現されています。表の顔はとりつくろえても、背中は正直に感情を表現してしまうのでしょうか。
心残りがあって思い切れない感情を「後ろ髪を引かれる」と云います。母のうしろ姿からは、その思い切れない母の様々な感情、淋しさ、悲しさ、そして大きな愛や喜び等が察せられ、見る子供の心を慰め、ある時はがまんさせたり、決意させたり、無言の会話を成立させるのです。