▲をクリックすると音声で聞こえます。

豊かな心を養う

土屋 至

今日の心の糧イメージ

 縦2センチ横5センチほどの長方形に切ったうすい紙があります。これを高いところから手を離して落としてみるとどのように落ちていきますか?

 ジグザグ状に揺られるようにおちていく、ひらひらと舞いながら落ちていく、くるくるまわりながら落ちていく、さて答えはどれでしょうか? 簡単ですから実際にやってみてください。正解はくるくる垂直方向にまわりながら落ちていくのですね。

 では、正方形の紙を落としてみてください。これはくるくるまわらずにひらひらと舞い落ちる感じです。ということは、縦横の比を変えていくとどこかでくるくると回り出すようになるということでしょうか? どうしたら速く回転しますか?

 一辺を少し短くして縦に長い台形状に切ったものを落としてみましょう。あるいは、細長い三角形に切ったものを落としてみます。くるくるまわりながら、しかも螺旋を描きながら落ちていきます。下を向いているのは細くとがった方ですか?

 さらに、凹レンズや凸レンズの断面みたいに切ったものや、縦におり目を入れたもの、横におり目を入れたもの、あるいは少し厚い紙でやってみるのもいいでしょう。

 では、グライダーみたいに回らずに滑空しながら落ちていくにはどうしたらいいでしょうか? あるいはカエデの種みたいに水平方向に回転して落ちていくにはどうしたらいいでしょうか?

 一枚の紙切れが落ちていくというごく日常的で単純な現象の中にも、こんなにたくさんの不思議がつまっています。これを観察していると「こうしたらどうなるか?」「こうするにはどうしたらいいか?」「どうしてこうなるのだろう?」と疑問はどんどんふくらんでいき、好奇心は果てしなく広がっていきます。これが科学する心の豊かさなのですね。