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豊かな心を養う

森田 直樹 神父

今日の心の糧イメージ

 不思議なことだと常々思っていることがある。洗濯機や掃除機、食器洗い機、乾燥機などの家庭用電気製品に囲まれている現代の私たちにとって、家事に費やす時間は、昔と比べて、大幅に減ったはずなのに、毎日が忙しい。

 コンピューターやコピー機、スマートフォン、電気計算機などのハイテクノロジー機器に囲まれている現代の私たちにとって、仕事での単純作業に費やす時間は、昔と比べて、大幅に少なくなり、働く人たちの負担が軽減されているはずなのに、毎日が忙しい。

 社会の風潮なのか、元来、そういう人間の性質なのか、とにかく人々は目まぐるしく動き、働く。交差点の信号を渡る人たちを見ていても、忙しさがにじみ出ている。

 忙しさの中で、日々の生活に埋没してしまい、周りが見えにくくなっている状況で、果たして豊かな心は養えるのだろうか、とふと思ってしまう。

 イエスは私たちに告げる。
「空の鳥をよく見なさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、倉に納めもしない。だが、あなたがたの天の父は鳥を養ってくださる。あなたがたは、鳥よりも価値あるものではないか。」(マタイ6・26)
「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。まして、あなたがたにはなおさらのことではないか。」(マタイ6・28〜30)

 豊かな心を養っていくためにも、日常生活のスピードを少し緩めて、周りをゆっくり眺めることから始めてみたいと思う。自分自身の時計を横に置いて、別の時の流れや計らいがあることに気づいてみたい。そこに、豊かな心を養うための扉があると信じて。