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豊かな心を養う

越前 喜六 神父

今日の心の糧イメージ

 ある説話を紹介しよう。

 昔、ある村にひとりの貧しい人が住んでいました。猫の額ほどの土地しかないその人は、毎日、自分は貧乏で不幸だという思いばかりに囚われながら、細々と暮らしていました。ある冬の日、一人の旅人が一夜の宿を求めて立ち寄りました。暖炉にあたりながら、その旅人にさんざん自分の悲惨な境遇を訴え、ぐちっていました。彼の話をゆっくり聞いた後、旅人は、こういう話をされました。あなたは自分の屋敷や土地の中に、莫大な宝が隠されているのがわかっていない。思い切って、道具を使い、土地を掘ってみなさい。そうすれば、宝物が見つかるでしょう。わたしはいずれまたお訪ねしますと言って、出立しました。貧しい人は、騙されたと思いながらも、その話を信じて、自分の土地を一生懸命掘ってみました。宝物は何も出てきませんでしたが、せっせと働いているうちに、その小さな土地は、立派な畑になることが分かりました。土壌の質もよく、また排水もよく、植物の種を植えたところ、よく生長し、豊かな実りをもたらしました。小躍りして喜んだ彼は、収穫物の一部を近くの村の人々にも無償で差し上げました。数年経って旅人が立ち寄ったときには、その貧しい人は、精神的にも物質的にも豊かな人になっていました。

 こういう簡単な物語にコメントはいらないでしょう。要するに、私が強調したいことは、信じるか信じないかは別にして、神は人を神の似姿として創造されています。それで人の魂や心や体の中には無限の宝が潜んでいます。要は、それを信じ、おのが可能性や能力、才能という宝を一生懸命開発して、開花・結実させるよう工夫・努力することではないでしょうか。