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豊かな心を養う

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

 「心の貧しい人々は幸いである。天の国はその人たちのものである」で始まる、イエスの山上の垂訓は、マタイによる福音書では5章の冒頭にあり、ルカによる福音書でも6章に出てくる、あまりにも有名なみことばです。(6・20)

 1981年4月、マザー・テレサは初めて来日なさり、大都会の東京を短い滞在の中で見て歩かれた結果、帰国に際してこのようにおっしゃいました。「日本は豊かに物があふれる国、でも心は貧しい」そして3回の来日の間に、日本にも「神の愛の宣教者会」を開いて下さいました。

 マザー・テレサが感じられた貧しい心とは、ひとりよがりの淋しい心、他者に温かい眼を向け、いたわったり、分かち合う気持ちの繋がりを失った心のことであったと思います。1980年代の日本はひたすらバブル景気に向かって、走っていたので、思いやりの心を忘れ、自己中心の競争社会だったからです。

 1990年代バブルがはじけ、阪神淡路大震災に見舞われ、眼が覚めた人々が懸命な努力をして、21世紀の日本を支えようとしているのが現状です。

 さて今回のテーマは「豊かな心を養う」です。この豊かな心とはマザー・テレサが指摘された、心の貧しさの反対であり、やさしさや思いやりなどの深い愛情、敏感な反応や想像力などが含まれるのでしょうが、さて、心を養うとなると体験しか無いのではと、頭を抱えてしまいます。

 では、聖書の中の「心の貧しい人々は幸いである」とは、どのような人々を指し、なぜ幸いなのでしょう。それは、自分の貧しさを知り、豊かな心を養おうと神に祈りすがって努力することで、天の国へ向かっていける人々で、だから幸いなのだと気付きました。