心新たに

森田 直樹 神父

　以前からずっと拒み続けていた。何かと理由をつけたり、タイミングが悪いと自分に言い聞かせたりして、１０年以上、逃れ続けてきた。できれば、一生、触れないで済むものなら、と願い続けてもいた。

　ここから新しい一歩を踏み出せたのは、そんな私を後押しする一人の人の言葉と、自分ではどうしようもない状況だった。だから、私自身は不安と当惑のただなかにあり、なかなかこの事態を受け入れることが難しかった。

　実は、今まで自動車運転免許を持っていなかった。子どもの頃から、車がある生活ではなかったし、バスやタクシーで事足りると、自分自身に言い聞かせ続けていた。しかしながら、どうしても今回は避けることができなかった。

　若い学生さんと机を並べて学科教習を受け、指導教官に注意されても、車を動かすのに必死で、ほとんど注意が耳に入ってこない教習所内教習を受けた。"五十の手習い"ではないが、全く新しい事柄を苦労しながらも受け入れ始めていた。

　新しいことを始めると、新しい発見と学びがある。歩行者を最優先にすることや、道路は多くの人たちと一緒に共有している場所なのだ、という認識を新たにした。心新たに「初心者マーク」をつけて街中を車で走り始めている。

　新しいことを始めたり、新しい考え方を持ったりすることは、年齢と共になかなか難しくなっていくのかもしれない。しかしながらそれはいつでも、どこでも可能でもある。

　アメリカの哲学者、心理学者のウィリアム・ジェームズの言葉に次のようなものがある。『心が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる。』

　あなたが心新たに新しい一歩を踏み出すのは、今、この時である。