四年目、積もっていた雪が消えると、牧草用の肥料を買い込み、手でせっせと撒きました。牧草地を広げたので、撒くのに一週間もかかりました。しかしそうして生えてきた牧草を羊たちに食べさせると、お腹の具合がよくないのです。
「困ったなあ。どうすればよいのだろう」
そんな時、出会ったのが奇跡のリンゴで有名な木村秋則さんが責任編集した「木村秋則と自然栽培の世界」という一冊の本でした。無肥料・無農薬で自然栽培をしようとする提案です。〈肥料なしで植物は育つのかしら。羊たちの糞や敷きわらで作った堆肥もいらないなんて。信じられない〉
化学肥料や農薬は人間の英知の賜物だと、信じて疑わなかった私にとって驚きの本でした。
五年目の今春、心新たに私は無肥料無農薬で牧草を育てることを決心しました。雪解けを楽しみにしているところです。