本来、人間は新しいものが好きな生きものであるらしい。新しもの好きであるが故に、人類は進歩繁栄したのだと唱える学者もいるほどだ。
ところが不思議なことに、自分からかけ離れて新しいものは、人間は受け付けない。人が好むのは「なじみのある新しいもの」なのだそうだ。よく知っている野菜の中の、例えば新種のトマトやかぼちゃであれば、食べてみようと思う。しかし、食用トカゲでは、食べる気にはなりにくい。実際には美味しくても、爬虫類を食べることにはなじみがないから、受け付けないのである。
日常を楽しくするコツは、この「なじみのある新しいもの」に多く触れることであるそうだ。
私たちにとって、最もなじみのある、親しくて新しいものは何だろう。それは心ではないかと私には思われる。心はいつも私たちの内にいて、悲しんだり、喜んだりしている。大事にすることをつい忘れてしまうくらい、私たちに親しい。そして、私たち自身でありながら、なかなか思い通りにはならない未知の生きものだ。
ただ、心からは良い香りがする。新しいシャツに腕を通して、その香りに、今日を一日頑張ろうと思う時、心も良い香りを放っているのだ。
ささやかでも善きことをめざす時、陽の方角へ花が向くように、心はひらいて良い香りを漂わせるのかもしれない。
一日が新しく始まる時、心もまた始まる。今日一日の新しい心を始めたいと思う。