そして、もう何年も前のことですが、日本文学の研究者として有名なアメリカ人の老紳士と、ある修道院の食堂で同席したことがあります。今となっては、どういうことからそのような話になったのか憶えていませんが、その方はアメリカ兵として沖縄戦を経験した人でした。涙を浮かべて沖縄戦の悲劇を語られました。この方は、この年になっても、沖縄の人たちの悲劇をこのように生々しく忘れないのだと呆然とするような思いで聞いていました。確か、その修道院に沖縄で一緒に戦ったアメリカ人で、戦後修道士になった方がいたのです。
平和を考えるということは、人を愛するということと同じに、想像力がなければ出来ないことだと思います。子どものときに、人の悲しみや苦しみを思いやる心が育たなければ、いつまでたっても戦争はなくならないのではないかと思います。そして、あの被災地の女性のように、自分たちが一番大変なんだと思わない、世界中に大変な人たちが他にもたくさんいるのだと、常に思うことが、とても大切なことのような気がします。