「千里の道も一歩より起こる」という諺があるように、どんなに大きな、または立派な決心も、最初の一歩を踏み出さない限り実現しないのが事実ですし、その一歩を踏み出すのに、案外、勇気が要ります。
始めたから、それでいいわけではなくて、"続ける"ことが大切なのです。「継続は力なり」と言われていますが、いろいろのことを「はじめましょう」と始めても、三日坊主に終わっては、何にもなりません。かくて、意志の力も必要になります。
私が修道会に入会して、アメリカに派遣された時のことです。修練長は私たち一人ひとりに、数珠玉を10個ほどつないだ一本の紐状のものを渡し、一週間に一つの目標を立てること。実行できた時は珠を一つ押し上げ、失敗した時は一つ下げて、一週間の終わりに記録をつけるようにと言い渡したのでした。
「足音を静かに歩く」「沈黙を守る」というようなことでしたが、この習慣は、修道生活のみならず、今の私が日々の生活を正して生きる上で、大きな助けとなっています。
今、私の机の傍らの壁には、押しピンで小さなメモが貼ってあります。「愚痴を言わない」「祈りの時間を削らない」「間食をしない」といった、書くも恥ずかしい決心なのですが、その一つひとつを始め、続けることによって、私は、自分が修練院で教えられた初心を忘れずに、日々生きていきたいと思っているのです。