

最近、母は図書館にすっかり夢中になっている。
軽い認知症の父とのふたり暮らしなので、どうしてもストレスが溜まってしまう母。その発散方法といえば、海外に住む娘たちに電話をかけて愚痴をこぼす他、大好きな読書を楽しむことにしている。
数ヶ月前、私が台湾に帰省した際に、母を近所の図書館に誘った。
これまで「紙の時代」で止まっていた母にとって、今の図書館はまるで別世界だった。手持ちのスマートフォンひとつで、蔵書検索から予約貸し出し、さらには返却期限の延長まで、ほぼ全てのことができてしまう。そのあまりの便利さに、母はまるで浦島太郎にでもなったかのように驚き、喜んでいた。
実は、私に図書館の楽しみ方を教えてくれたのは母であった。
若い頃の母は家計を助けるため、高校卒業後すぐに働きに出たという。大学進学の夢は叶わなかったけれども、母は本を開くことで世界を広げ続けた。好きな漢詩や古典文学を
そんな母が幼い私の手を引いて、何度も通った図書館。青白い蛍光灯の光、黄ばんだページをめくるかすかな音、そして指先に残る、角が丸くなった検索カードの感触。書庫から漏れてくる重なり合った活字の匂いに包まれながら、私は健やかに、そして心豊かに育った。
今、自分が絵本に携わる仕事に恵まれている原点は、間違いなく、あの古めかしくて温かい図書館の中にあった。
かつて古い検索カードの引き出し方を教えてくれた母に、今度は私がスマホでの予約の仕方を教える。
時代が変わっても、図書館はいつでも私たちのそばにあり、日々の健やかな生活をそっと支え続けてくれている。