

豊作のホウ、豊(ゆたか)という漢字は、神に供える穀物がたっぷりと台に盛られている様子を表している。脚のついた大きな台に何種類もの穀物を盛り、神に感謝を捧げて、収穫を祝う、それが豊かということであると、古代の日本では考えられたのだろう。
私たちは水田や畑のある光景に、故郷に帰って来たかのようななつかしさを感じることがある。秋には、黄金色の稲穂が実る景色を美しいと思い、心のどこかがほっと安堵して落ち着く。
それはもしかすると、田畑で働いた祖先の心が私たちの中にも受け継がれていて、私たちは遠い祖先と一緒に、豊作の実りを喜んでいるのかもしれない。そう考えると、地平と共に心も遥かに広がっていくようだ。
現代の日本でも、穀物の生産高は決して少なくない。
経済的な豊かさを表す国民総所得GNIは世界第四位である。
ただ、個人の幸福度を調べたワールドハピネスレポート(世界幸福度報告)2026年3月発表では、日本は147カ国中61位。
日本人の幸福度が低くランクづけされる理由は、個人が寄付や援助をしないからなのだそうだ。海外では、自分の収入なりにチャリティ活動をすることが、恵まれて幸福な生活をしている証とみなされるのである。
豊(ゆたか)という字の中には、神に献げ、仲間と分け合うための台がある。それは私たちの祖先のよき心が置いたものなのだ。どんな収穫でも、奪い合うほど足りなくなり、分け合えば皆に行き渡るものだとよく言われる。
神に感謝し、人と分け合う時、私たちは心の深いところから湧き上がるように豊かになれる。その幸福を知る者でありたいと思う。
黄金色の収穫の季節が、もうじきやって来る。