

1981年、日本を訪れたマザー・テレサは、東京の道端でホームレスの人々が寒そうな姿で寝ているのを見て、「日本は豊かな国ですが、同時に貧しい国でもあるようです」と語った。マザーは、どんな意味で「日本は貧しい」と言ったのだろう。
ホームレスの人々が道端で寝ていたことが、驚きだったのは間違いない。日本は豊かな国だと聞いていたが、道端で寝ている人たちがいる。そこに貧しさを感じたのだ。しかし、マザーの言う貧しさは、それだけではない。彼女が指摘したかったのは、「道端で寝ている人がいるのに、なぜ誰も助けの手を差し伸べないのか」ということだった。
マザーはそこに、人間の心の貧しさを見た。もし人々の心が愛で満たされているなら、道端で凍えそうになっている貧しい人を見て、誰かが助けの手を差し伸べるはずだ。しかし、誰も助けようとしない。この国の人たちは、もしかすると、自分がお金持ちになることばかり考えて、他の人の苦しみに共感する心、人を愛する心を見失っているのではないか。物質的には豊かになったが、心は逆に貧しくなってしまったのではないか。マザーはそう感じたのだ。
心の貧しさは、人間を不幸にする。人間の幸せが、互いにゆるしあい、愛しあって生きることにあるなら、「自分さえよければいい」という考え方をしている限り、誰も幸せにはなれないのだ。では、どうしたら豊かになれるのか。そのために必要なのは、貧しい人たちに助けの手を差し伸べることだとマザーは説いた。貧しい人たちを愛することによってのみ、わたしたちの心は愛で満たされ、豊かになるというのだ。この指摘は現代の日本にも当てはまるだろう。
マザーの言葉を、改めて心に刻みたい。