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根っこ

松本 准平

今日の心の糧イメージ

 学生時代、とても仲の良い友人がいました。彼は大学受験に失敗し、一浪したものの志望校に行くことは叶わず、悔しさと共にハングリー精神を持ち続けていました。当時決められたレールを生きることに抵抗を覚えていた僕は、すぐに彼と意気投合し、互いに発破(はっぱ)をかけ合う関係になりました。

 彼はよく、Qちゃんことマラソンランナー・高橋尚子(たかはしなおこ)氏の恩師の言葉を引用して僕に語りました。「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」。

 その後彼とは様々な活動を共にすることになるのですが、彼はその裏で着実に勉強し、日本有数の大学院に進学、今は社会人として華々しく活躍しています。

 それにしても、「根を伸ばす」というのは一体どういうことでしょうか。そもそも根というのは養分を得る働きをする部位。この言葉は、土の底の底まで、自分の栄養となるものを探しに行き、それを得るということなのです。

 そう考えれば、「根を伸ばす」とは、友人がしたように懸命に勉強することであり、しかし時にはゆっくりと休むこともそうかもしれません。時には遊びだって、旅だって、根を伸ばすことになるかもしれません。
 つまり、私達が自分の栄養になると信じ、そう願って日々を過ごすならば、たとえ何も咲かない寒い日々であっても、それは根を伸ばしているということなのかもしれない。この態度はあらゆるものを消費し、無為に過ごす態度とは明確に異なるものです。

 友人はこの言葉を、自己信頼のつもりで教えてくれたのかもしれません。しかし、今考えればこれは、栄養を必ず与えてくれる「世界」への信頼。私達を包む「時間」への信頼ではないでしょうか。

 そして、「今・ここに置かれていること」への絶大な信頼なのです。