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試される

堀 妙子

今日の心の糧イメージ

 私たちの一生は、喜びは少なく、常に苦しみや不安がつきまとうのではないでしょうか。それが人間として当然のことだとは思いつつも、悩みを打ち明ける存在がいないと辛いと感じます。そんな時、ある修道会のシスターに話を聞いていただこうと思い立ちました。

 シスターは私の話を聞いてくださったあと、「あなたにプレゼント!」と、ずっしりと重い包みを渡してくださいました。何かと思い、開けてみると何冊かの絵本...。なんと、そのシスターが就寝前に読む絵本なのだそうです。

 この修道会の保護の聖人は"アビラの聖テレサ"です。私はてっきり、シスター方は、聖女が書いた『霊魂(れいこん)(しろ)-神の住まい』などを読み、聖なる光に照らされながら就寝なさるものと思っていました。

 ところが、いただいたのは絵本。それも、かわいいウサギが出てくる絵本、ユーモラスなネコたちが登場する絵本、少年、モグラ、キツネ、馬が出てくる絵本など...。

 毎晩、いただいた絵本を読み、心のすさみもとれてよく眠れるようになった頃、一冊の絵本の隅に、鉛筆で小さく書かれた名前を見つけました。それは、絵本をくださった方のお名前ではありませんでした。

 その絵本は別のシスターの形見だったのです。
 そのシスターとも親しかったので、亡くなる二日前に、私はお見舞いに行っていました。

 そこで忘れられない言葉を聞いたのです。

 彼女は満面の笑みを浮かべながら、「私は病気が治って、ふたたび修道院に帰りたいとは思わないのよ。今、私のまわりには天使がたくさんいるの。イエスさまのいらっしゃる天国があまりに美しいのですもの」

 私はこの言葉を聞き、人生とは、天国に行くために試される場所、死とは天国への扉を開けることなのだと思いました。