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試される

岸本 景子

今日の心の糧イメージ

 10年前、映画『ある夏の送り火』の制作準備をしていた時のことです。映画は、娘を亡くした母親と家族の、喪失と再生を描いています。

 タイトルになっている「送り火」は、海の事故で亡くなった人々の魂を弔うために、香川県さぬき市白方(しらかた)という小さな漁村で受け継がれていた行事でした。
 しかし、高度経済成長の影響で人口は減少し、担い手を失って途絶えてしまいました。それでも後世に残したいとの思いを胸に、40年の時を経て、地域の老人会の人々が復活させたのです。

 祖母を亡くしたばかりで塞ぎ込んでいた私は、この復活の知らせをネットで知り、「死」は終わりではないということに改めて気づかされました。

 けれども、その当時のさぬき市では、この送り火そのものを知る人はほとんどいませんでした。

 亡くなった人との関係を結び直してくれるこの行事を、地域の人たちに知ってもらいたい、その思いから、一緒に映画を作る仲間探しが始まりました。

 最初は協力者も少しずつ増えていきましたが、ある時から、ぱたりと人が集まらなくなりました。刻一刻と迫る撮影の日。なぜこの状況になったのか分からず、途方に暮れていました。

 立ち止まり、祈りのなかで気付いたのは、地縁のないこの土地で映画を作りたい理由が、「送り火を知ってもらいたい」から、「自分の映画を世界に届けたい」に変わっていたことでした。

 その気づきの後、老人会の皆さんと自治会長さんの協力を得て、撮影は町ぐるみで進められました。完成後の試写会では、400人収容のホールが満席になるほどの人々に、映画を通して送り火を知っていただける機会となりました。

 この経験を通して、「誰かのため」に行動することが大切だと、深く胸に刻まれました。