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真の強さ

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

 これまでの人生、仕事柄色々な人と出会ってきましたが、一つの見方として、この人は自分の生き方に満足しているか、あるいは自分が生きてきた歩みにしっかりと足が着いているかどうかが気になることがあります。

 そう考えたとき、高校生の研修会でリーダーをしていた一人の男子高校生のことが思い出されました。それは私がまだ神父になる前、神学生だった時のことです。

 ありきたりなテーマ「どのような大人になりたいか」で、高校生たちと話し合っていたのですが、リーダーの彼は見た目とても落ち着いているのです。そして真剣にそのテーマと向き合いながら、「今の自分の立場ではここまでしか言えません」と答えているのです。

 その態度に、彼がとても堂々としたオーラを漂わせているのに気がつきました。どう表現して良いのか判りませんが、自分自身をしっかりと捉えているのです。

 当時私は、30才手前のいい大人でした。修道会に入って何年も経っていましたし、研修期には2年間の社会経験も過ごしました。彼より10才も年上なのです。

 しかし彼を見るなり、人間として負けた、彼は私より随分スケールのでかい人間なのだ、そんな感じが私の心に拡がり、謙虚さをもたらしました。

 このことは、私の人生にとって良い刺激となりました。人の生き方の見える部分、接する部分ではなく、堂々と自分自身に土台を置いた生き方をすることによって、何物にも代えがたい生きる強さを持つことが出来るのだと感じたのです。

 それから、自分の能力で有頂天になっているとき、人から認められたとき、人から良い点ばかりを評価されたとき、もっと自分自身の土台に足を置かなくては、そう自分に言い聞かせています。