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大きな壁

竹内 修一 神父

今日の心の糧イメージ

 対話の大切さ――それは、私たちが、普段の生活の中で素朴に理解していることです。しかし同時にまた、それがそれほど簡単でないことも経験しています。何気ない自分の言葉が相手を傷つけてしまうこともあれば、その逆もあります。また、かつては日常会話の中で使われていた言葉が、今では差別用語となっていることも珍しくありません。

 「人の口は、心からあふれ出ることを語る」(ルカ6・45)。

 確かに、よい言葉であってもそうでなくても、もし心の中になければそれが口をついて出てくることはないでしょう。

 マイクロアグレッションという言葉があります。これは、たとえ自分にはその意図がなくても、結果的に相手を傷つけたり、差別したりする言動を意味するようです。自分の心の中に潜んでいる思いや言葉が、そうさせます。

 時には、善意で語ったつもりでも、相手は否定的に捉えてしまうといったこともあります。これは、大変悩ましいことです。その結果、対話そのものが恐ろしいものとなってしまいます。しかしこれは、どう考えても健全なことではないでしょう。いったいどうしたらいいのでしょうか。

 相手の言葉を正しく理解すること――それは、決して簡単なことではありませんが、まずそれを良い方に解釈してみるのは、いいかもしれません。また、相手に言葉を投げかける時は、相手の受け取れる言葉を、受け取りやすいように投げかけてやる、そのような心遣いも大切でしょう。求められること――それは、言葉のキャッチ・ボールであって、言葉のドッジ・ボールではありません。

 「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」――(マタイ7・12)黄金律ですが、改めて思い起こしたい言葉です。