1989年11月9日、ドイツを東西に分断していたベルリンの壁が崩れました。この壁が築かれたのは1961年。現在のロシアであるソ連とアメリカが対立し、東ドイツから西ドイツへの流出を防ぐための壁でした。
この壁について、ある司祭から不思議な話を聞きました。
司祭がドイツに滞在していた時のことです。見知らぬ女性から「あなたは神父ですか?」と声をかけられました。その人は司祭に「ある女性が老衰のために亡くなったけれど、20代後半からソ連に住み、長年ホテルでマッサージ師をしていた」というのです。
(名前を仮にハンナとします)「ハンナはカトリック信者だったのですが、ご聖体を拝領するのは、そのホテルに泊まったカトリックの神父が来た時だけ。およそ10年に1度」。
ハンナがソ連に行ったのは、「私をもう一人の聖母としてお使いください。マッサージの業をイエスの愛に変えてください」と願ってのことだったそうです。
女性は、ドイツに戻ってきていたハンナのアパートをときどき訪れ、彼女の話を聞いたのだそうです。
「彼女の手でコリのある魂と体をほぐしてもらうと、その体から"流れ"が出来るの」と女性は話しました。
ハンナはマッサージ師としての施術でかすかな愛の流れを作っていましたが、その流れはほかの祈りの働きと合流し、そして川になり海となり、遂に大波となって今まで誰も崩すことのできなかった大きな壁を崩す力になったのではないでしょうか。
今も世界中で戦争は続き、破壊された町が映し出され、次第に激しく複雑になっていきます。
そんな時、このマッサージ師ハンナの姿は、まるで「カナの婚礼」の召使いのようです。(参 ヨハネ2・1~11)
召使いは聖母の合図を待ち、イエスの奇跡を待つのです。