10歳ちがいの長兄は今年米寿である。
若い頃、何回か大病を患い、大手術もして入退院を繰り返したので、長生きするのは無理だろうなあと家族も周囲の人も思っていた。
しかし、それは人間の思いであって、神さまの思いは異なっていた。
現在、兄はケア付き老人住宅に一人で住み、まわりの人に感謝しながら、日々、懸命に生き抜いている。
兄が病気するたびに必死で支えてくれた義理の姉は10年前に天国に召された。
気落ちしていたのもわずかの期間、兄は生きる希望を失わず、私たち兄弟姉妹にあまり失意の姿を見せることなく生きてきた。
というのは、病気がちの父の姿を見て育った長男が、まずは父のために、そして病気に苦しむ人たちのために医者になったのである。そして今では父の主治医として見守ってくれているのである。
兄はそのことに深く感謝している。
昨夜も電話して様子を聞くと、「幸せや、身体のどこも痛くないし、ご飯は3度3度美味しくて完食してるし・・・。もったいないくらいや。いつも思うんや、神さまのおかげやなあと・・・」と、"感謝"と"神さま"の言葉が数え切れないくらい出てきた。
私も「お兄ちゃんが何事に対しても不平不満を言わず、いつも感謝してるからますます感謝することばかり起こるんやわ」と言った。
「まさか俺がこの歳まで生きられるとは思ってもなかったわ。神さまのおかげやな」
この兄の存在は私たちほかの兄弟姉妹の励みとなっている。
兄は今日も「人事を尽くして天命を待つ」の心境で精一杯生き抜いている。